ソプラノ/アウトリーチ専門演奏家/声楽講師の永井友梨佳です♩
ネオクラシカルな日本のうたの曲紹介シリーズ。
今回は、木下牧子作曲・やなせたかし作詞の「雪の街」です。
歌曲集「愛する歌」の6曲目となります。
作曲の木下牧子さんって?
このブログでもっとも多く取り上げている作曲家さんです。
詳しくはこちらから↓
作詞のやなせたかしさんって?
アンパンマンで有名なやなせたかしさん、実は詩人としても活躍されていました。
詳しくはこちら↓
「雪の街」の歌詞
では、歌詞をみてみましょう。
雪の街
ボクらは歩くよ 雪の街を
街はしずかで
並木はシンミリ
雪はふるふる シンシンシン
ああ すごくきれい
すごく はなやか
そんな雪の中を
ボクらは歩いていく
ランラ………
ボクらは歩くよ 雪の街を
窓はひらかず
並木は ひっそり
雪はふるふる ヒソヒソヒソ
ああ すごくしずか
すごく やさしい
そんな雪の中を
ボクらは歩いていく
ランラ………
やなせたかし・詩
読んでいると、雪の降る情景が浮かんできます。
シンシンとやさしく降る、美しい雪の景色ですよね。
深掘りするとみえてくるもの
さて、さらっと読める詩なのですがぐぐっと深掘りしてみます。
まず、歩いているのは誰なんでしょう?
「ボクら」と言っているから、大人ではなく子供ではないかなと思うんですよね。
普通、子供が雪の中にいると、はしゃいで遊びまわるようなイメージ。
けれど、「ボクら」は雪のなかを、ただひたすら歩き続けています。
「街はしずかで 並木はシンミリ」
「窓はひらかず 並木はひっそり」
こんな表現もあるので、とても静かな中を歩いているようですよね。
美しくシンシンと降る雪の中を、子供たちが歩き続けている。
ここまで想像してみると、美しい情景ではあるけれど少し怖いような…
グリム童話のような、ミステリアスな雰囲気もあります。
もはや、「ボクら」は子供ではないのかな?
雪の妖精のような、なにか人間ならざるものなのかも…
やなせさんの詩は、本当に想像がふくらんで楽しいですよね。
不穏な美しさ
この詩に木下牧子さんがつけられた曲も、美しくもミステリアスな雰囲気たっぷり。
基本はE-moll。短調でかかれています。
ピアノのイントロから、雪の世界に引き込まれていくような…
そして4分の2拍子で、雪を踏みしめながら歩く感じがします。
「ああ すごくきれい」から、突然明るい長調に転調するのですが、
そこもミステリアスというか、良い意味で唐突な怖さがあります。
E-moll(ホ短調)⇒G-dur(ト長調)⇒E-dur(ホ長調)⇒E-moll(ホ短調)
というように、平行調(G-dur)、同主調(E-dur)と転調していくんです。
ここ、割と音が取りづらいというか、メロディーに不安感があるような気がします。
詩の、少し不穏な感じを表現しているのかも?
でも、この不穏な感じが美しくもあります。
さて、平行調と同主調がでてきたので、
【ちょこっと音楽用語解説】
平行調:調号(♯や♭)が同じ長調と短調
(この曲の例だと、ト長調とホ短調は平行調。ともに♯1つ)
同主調:主音が同じ長調と短調
(この曲の例だと、ホ長調とホ短調は同主調。主音が同じ「ミ」の音)
雪が印象的な絵本
この曲を深掘りしていくなかで、思い出したものがあります。
小さな頃に読んだ、雪が印象的だった絵本。
「手ぶくろを買いに」です。
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教科書にも載っていたりするみたいなのですが、知っている方いるのかな?
あらすじはこんな感じ↓
狐の親子の住んでいる森に冬がやってきました。母ぎつねは冷たくなった子ぎつねの手にあう毛糸の手袋を買ってやろうと思います。
でも昔、町へ出かけたときの怖い出来事を思い出して足が進まなくなった母ぎつねは、しかたなく、子ぎつねをひとりで町へ行かすことに。
人間に悟られないように、子ぎつねの片手を人間の子供の手に変え、お店に行ったら必ず人間の手のほうを差し出して、この手にちょうどいい手袋ちょうだいと言うように言い聞かせますが、こんばんは、と戸を開いた帽子屋の光がまばゆくて、きつねは反対の手――きつねの手を出してしまいます。
お店の人間は狐だと気づくのですが、お金が本物だとわかると子ぎつねに手ぶくろを売ってくれます。
そして子ぎつねは「人間ちっとも恐くないや」と思い、家に帰ってこのことを母ぎつねに話します。
母ぎつねは「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら」
とつぶやいて、物語は終わります。
雪景色と、親子のきつねの絵が可愛らしくて、
子ぎつねがひとりお店へ行くときのドキドキ感や、手袋を手に入れたときの喜びも伝わってきて
とても心温まる絵本だった記憶があります。
でも、子供のころはあまり意識しなかったけれど、きつねの人間に対するの恐れなども描かれているんですね。
名作絵本です。また読みたくなりました(*´`)
おわりに
美しくもミステリアスな、冬に聴きたい1曲でした。
季節は少しづつ春に向かっていますが、寒いうちに書きたい曲だな、と思い
今回記事にしてみました。
歌曲集「愛する歌」の解説も、あと残り数曲かな?
やなせさんと木下さんの世界は、本当に深掘りのしがいがあります。
これからも大切に歌っていきたい1曲です。
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