ソプラノ/アウトリーチ専門演奏家の永井友梨佳です♩
ネオクラシカルな日本のうたの曲紹介シリーズ!
今回は、木下牧子作曲・やなせたかし作詞の「誰かがちいさなベルをおす」です。
歌曲集「愛する歌」の最終曲(10曲目)となります。
作曲の木下牧子さんって?
現在も活躍されている、特に声楽曲・合唱曲が人気の作曲家さん。
木下牧子さんについてはこちらの記事をご覧ください。
作詞のやなせたかしさんって?
アンパンマンの原作者として有名なやなせたかしさん。
実は詩人としてもご活躍されていました。こちらの記事をご覧ください。
「誰かがちいさなベルをおす」の歌詞
それでは、歌詞をみてみましょう。
誰かがちいさなベルをおす
黄色い街のあけ方に
誰かがちいさなベルをおす
すると朝日が眼をさまし
ポッカリ空へ顔をだす
黄色い街のヒルさがり
誰かがちいさなベルをおす
すると並木がふるえだし
木の葉の雨が降ってくる
黄色い街の夕ぐれに
誰かがちいさなベルをおす
すると夜ギリがわいてきて
空には青い星がでる
詩・やなせたかし
やさしくて、どこか不思議な、、
現実なようで空想のような、まさにメルヘンの世界に迷い込んでしまったような詩です。
「黄色い街」や「青い星」ということば、
そして「誰かがちいさなベルをおす」というやなせさんワールド。
黄色い街ってどこなんだろう。青い星ってどんなんだろう。
ベルをおすのは誰なんだろう。神様なのか、自然なのか、地球なのか…
こうやってふわふわと妄想がふくらんでいくのが、とても楽しいですよね。
この歌曲集「愛する歌」、もともとは合唱曲としてかかれたもので
合唱版は”女声(男声)による10のメルヘン「愛する歌」”というタイトルになっています。
そして、この曲は最終曲。
まさに、やなせさんの「メルヘン」な世界に浸れる詩だと思います。
また、この詩では一日の中の「あけがた」「ひるさがり」「ゆうぐれ」が描かれていますが、
同じ歌曲集の3曲目「海と涙と私と」の歌詞とも通じる部分があるな、と思いました。
メルヘンに浸れる曲
この詩につけられた木下牧子さんの曲は、
この「メルヘン」な世界観をより深めてくれます。
前奏からとても美しいです。そして、短調なんですよね。
ちょっと切なくて、儚いような感じもあって、
それが現実ではない、メルヘンな雰囲気を醸し出しています。
2連目の「黄色い街のヒルさがり」から、さらにメルヘン度が増していくのですが、
なんでかな?と思ったら、短調の中にすこしdur(長調)の要素が入ってくるんですよね。
でも完全には転調しなくて、さらっと元のfis-moll(嬰へ短調)に戻っていきます。
この転調しそうでしない感じ、浮遊感があって引き込まれていきます。
メロディーも1連目とは絶妙に違って、「そこいく!?」という意外な展開が良いんです。
サンリオとやなせさんの意外な関係
この歌曲集の詩は、やなせたかしさんの最初の詩集「愛する歌」に掲載されたものなのですが、
実はこの詩集、キティーちゃんで有名なサンリオから出版されているんです…!
やなせさんのWikipediaに興味深いエピソードが載っていたので、引用させてもらいます↓
1960年代半ば、漫画集団の展覧会に、まだ弱小企業だった頃の山梨シルクセンター(現・サンリオ)の社長辻信太郎が来場。やなせにグラフィックデザイナーとしてのオファーを入れたことから、サンリオとの交流を深める。
やなせは当初は菓子のパッケージを手掛けていたが、1966年9月にやなせが処女詩集『愛する歌』を出版社から出そうとした際に、「それならうちで出してくれ」とサンリオは出版事業に乗り出した。『愛する歌』はサンリオの業績を押し上げるほどのヒットを記録した。
出版事業に乗り出したサンリオの元で、絵本の執筆も始める。1969年には短編メルヘン集の十二の真珠で『アンパンマン』が初登場。ただしこのアンパンマンは後のものとは異なる作品であり、ヒーロー物へのアンチテーゼとして作られた大人向けの作品である。
やなせさんは、サンリオの前身企業でお菓子のパッケージなども手掛けられていたんですね~
そしてそのサンリオから初の詩集出版、そこから「アンパンマン」の誕生にもつながっていくとは…
日本の代表的なキャラクターであるアンパンマンとキティーちゃんに
こんな繋がりがあるとは、本当に不思議ですよね(*’ω’*)
おわりに
やなせさんのメルヘンワールド全開、
木下さんの曲によってさらにメルヘンが加速して、独特な世界観の一曲でした。
現実離れした世界観だけど、子供っぽくはなくて、どこか大人な雰囲気もあるんですよね。
とても深い表現ができる曲だと思います。
これからも大切に歌っていきたいです(*^^)
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