なかにしあかね

「よろこびが集ったよりも」作曲:なかにしあかね、作詞:星野富弘

ソプラノ/アウトリーチ専門演奏家の永井友梨佳です♩

 

ネオクラシカルな日本のうた 曲解説シリーズ。

今回は、なかにしあかね作曲・星野富弘作詞の「よろこびが集ったよりも」

歌曲集「二番目に言いたいこと」の4曲目となります。

 

 

作曲のなかにしあかねさんって?

このブログでも多く取り上げている、大好きな作曲家さんです。

詳しくはこちらをぜひ↓

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作詞の星野富弘さんって?

詩人であり、画家でもある星野富弘さん。

一度読んだら忘れられないような詩や絵ばかりです。

詳しくはこちら↓

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先日、星野さんの個人美術館「富弘美術館」にも行ってきました!!

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「よろこびが集ったよりも」の歌詞

では、歌詞をみてみましょう。

よろこびが集ったよりも
悲しみが集った方が
しあわせに近いような気がする

強いものが集ったよりも
弱いものが集った方が
真実に近いような気がする

しあわせが集ったよりも
ふしあわせが集った方が
愛に近いような気がする

詩・星野富弘

何度も読み返したくなるような、

星野さんならではの、人間というものの核心に迫るような内容だと思います。

 

幸せについて考えてみる

この詩を改めて味わって、自分の人生も振り返ってみると

たしかに、悲しい時や不幸せな時ほど、

人のあたたかさや、大切な人に気づけたような気がします。

みなさん経験があるかと思いますが、

不思議なもので、幸せな時って、その有難さになかなか気づけないんですよね。

「なにもない、当たり前の毎日」=「幸せな時」なのかもしれない。

当たり前な毎日がなによりも幸せなんだけど、どうしてもそれに慣れてしまいます。

星野さんの詩は、こういう大切なことにいつも気づかさせてくれます。

 

星野さんによる詩画

では、星野さんによる原画をご紹介してみます。


(「新編 四季抄 風の旅」星野富弘・著 P.87 より引用)

 

描かれている花は「こぎく」です。

小さな花たちが集っています。詩の内容ともリンクしていますよね。

葉っぱも青々としていて、つぼみもたくさんあって、生命力に満ちています。

菊といえば、お供えの花としても思い浮かびます。

とても長持ちするし、小さいけど強い花なんですよね。

 

ふしあわせの中の愛

この詩になかにしあかねさんが付けられた曲。

出だしはピアノパートは無く、長いアカペラで始まります。

8分の12拍子が、とても柔らかい雰囲気を感じさせますよね。

 

詩の1連目~2連目は、優しい曲調で進んでいくのですが、

以下の3連目から、ガラッと雰囲気が変わります。

しあわせが集ったよりも
ふしあわせが集った方が
愛に近いような気がする

それまではAs-dur(変イ長調)の明るい響きだったのが、cis-moll(嬰ハ短調)に転調します。

しかも、わりと前触れもなく突然の転調です。

そして、そこからは1小節単位でどんどん転調していき、

「愛に近いような」では、不協和音も使われて、メロディーも半音階で、

とても不安感が強くなります。

が、その不安感は一瞬で終わり、いつの間にか元のAs-dur(変イ長調)に戻っているんです。

 

この部分の音楽と、詩はどんなことを表しているんだろうと考えていると、

映画の「万引き家族」や「パラサイト~半地下の家族~」を思い出しました。

どちらの作品も、現代の格差社会に暮らす貧しい家族が描かれています。

貧しく、傍からみたら不幸せで、本人たちもそう感じているかもしれませんが、

そこには少し歪かもしれないけれど、かけがえのない「家族の愛」があって、

私はそこにすごく感動したし、多くの人が感動したんだと思います。

 

ここの音楽も、突然の短調の暗い響き~不安定にどんどん転調して~不協和音になるのは

「ふしあわせ」を表しているのかもしれません。

でも、この音楽の中に、歌詞で「愛」が出てきます。

「ふしあわせ」の中にも「愛」があるというのを、この音楽で表しているんじゃないのかなと

そう感じました。

 

また、ここに出てくる不協和音や半音階って、不安な感じはあるけれどとても美しいんですよね。

「ふしあわせ」が、必ずしもマイナスなことじゃないし

そこにも美しさがあるし、愛があるんだよと言ってくれているような気がします。

 

ソプラノ西由起子さんの解説

では、この歌曲集ではもうお決まりとなってきました

作曲依頼者のソプラノ西由起子さんによる解説をご紹介しようと思います。

 

まずは、星野さんのとても興味深いエピソードです↓

先ほど私が語った内容と通じる部分もあって、少しおどろきました。

人の先入観や固定概念って、怖いものだなあとつくづく思いますし、

私にも、まだまだこういった先入観があるなあと思いました。

こうやってひとつひとつ気づくことと、常に自分の何気ない考えに疑問を持つことで

柔軟な、人に寄り添った考え方ができる人になりたいですね。

この歌を届けること、この詩を聴いてもらうことで

誰かの気づきの一歩になってもらえれば

この上なくうれしいことだし、そうなりたいと思います。

 

また、演奏面ではこんな解説もありました↓

西さん、「自分自身に語りかける」というの、マネさせてください!(笑)

西さんも同じ考えなのかはわかりませんが、

私は、この曲や詩は、内省的な表現が良いのかなと考えています。

周りに伝えよう伝えようとがんばるのではなく、自分自身が納得しながら歌う方が

結果的に伝わるのかなあと感じています。

 

おわりに

星野さんの詩を深く読んでいくと、いつも気づきがあります。

本当に、たくさんのことを気づかせてくれる方です。

また、素晴らしい音楽で、詩をより深くしてくれるなかにしさん。

記事を書きながら、相変わらず好きすぎる!!となりました(笑)

この曲に出会えたことがとても嬉しいです。

これからも大切に歌っていきます。

 

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永井友梨佳
声楽講師/ボイストレーナー。ソプラノ歌手。
鳥取県米子市出身。京都市立芸術大学音楽学部声楽専攻卒業。

ストアカ プラチナバッジ獲得講師。レッスン受講者からの評価は、平均☆4.97をいただいています(レビュー件数200件以上)
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