ソプラノ/アウトリーチ専門演奏家/声楽講師の永井友梨佳です♩
ネオクラシカルな日本のうたの曲解説シリーズ。
今回は、木下牧子作曲・やなせたかし作詞の「ユレル」です。
歌曲集「愛する歌」の7曲目となります。
作曲の木下牧子さんって?
このブログでもっとも多く取り上げている作曲家さんです。
詳しくはこちらから↓
作詞のやなせたかしさんって?
アンパンマンで有名なやなせたかしさん、実は詩人としても活躍されていました。
詳しくはこちら↓
「ユレル」の歌詞
では、歌詞をみてみましょう。
※歌詞そのままではなく、音楽之友社 木下牧子歌曲集[増補新訂版]Ⅰの巻末に記載の詩(p.88)より引用しています。
ユレル
ユレル
しあわせに
ユレル
ユレル
かなしみに
ユレル
風にふるえる
花のように
ユレル
ユレル
ユレル私
ユレル
ユレル
おもいでに
ユレル
ユレル
あこがれに
ほそい柳の
枝のように
ユレル
ユレル
ユレル私
ユレル
ユレル
泣きながら
ユレル
ユレル
ほほえみに
白いちいさな
舟のように
ユレル
ユレル
ユレル私
やなせたかし・詩
この詩、一見するとわかりやすく童謡のようにも読めますが、
しあわせ、かなしみ、おもいで、あこがれ…
と、詩の中には抽象的なことばが多く、歌い手の想像次第で幅広い表現のできる曲だと思います。
どんなしあわせ、どんなかなしみを思い浮かべるのか、
それによっては、無邪気な曲にもなるし、大人っぽい曲にもなりますよね。
そして何度も繰り返される「ユレル」
この、ゆれているものは何なのか。
体がゆれているのかもしれないし、心のゆれうごき、感情の浮き沈みかもしれないし、、
本当に妄想が膨らんで楽しい詩です。
しなやかであることの大切さ
この詩の2連目に、「柳」が出てきます。
ほそい柳の 枝のように
「柳」って、ことわざなどにも多くなっている木ですよね。
たとえば、
「柳に風」
柳が風になびくように、逆らわない物は災いを受けないということ。また、相手が強い調子であっても、さらりとかわして巧みにやり過ごすことのたとえ。
「柳に雪折れなし」
柔らかくしなやかなものは、堅いものよりも、よく耐えたり丈夫であったりする。
こうやってことわざをみてみると、柳って、
「柔軟であること・しなやかであることの大切さ」を象徴しているような木だな、と思います。
常に風になびいてゆれていて、この「ユレル」という曲そのものみたいな木ですよね。
なんだか、人生訓というか、生き方を示してくれているようでもあります。
心や体は、いつも同じではなく「ユレル」のが私たち人間です。
いつも絶好調というわけにはいかないし、山あり谷ありで落ち込むこともありますよね。
体も、元気な日もあれば、そうでない日もある。
でも、その不安定さを楽しんで、ゆれながらも、人生を歩んでいく。
そういうことを教えてくれているような気がします。
簡単なことばでわかりやすい詩なのに、こうやって深掘りしていくと様々な発見がある。
そこに、やなせたかしさんの凄さを、改めて感じますね。
「ユレル」感と、増3和音
この詩に木下牧子さんがつけられた曲は、まさに「ユレル」感満載!
8分の6拍子と付点のリズムで、思わず体がゆれてしまいます(*^^)
繰り返し出てくる「ユレル」のメロディーもとてもキャッチーで、
一度聴いたら口ずさんでしまうような親しみやすさがあります。
また、個人的にすごくお気に入りの部分があるんです。
「かぜにふるえる」の部分なのですが、
コード進行が Dm7→E→Caug7→F となっています。
この Caug7 というのが、【増3和音】という少し特殊な和音。
この和音がすごく素敵で、ちょっとした切なさ、繊細さ、みたいなものが感じられて
とてもとても美しいんです。
やなせさんの詩と同じように、一見親しみやすい曲だけど、一筋縄ではいかないよ、というような…
こういう和声を、さりげなく組み込んでくるのが本当に素敵です。。
おわりに
いかがでしたか?
個人的には、いろんな想像を膨らまして、
1番から3番まで全く違う表現を楽しみたい1曲です!
そして、詩や曲を深堀りしていく中で、
柳のように、また、この曲のように、
しなやかに生きていきたいなあとしみじみ思いました(*´ω`)
これからも大切に歌っていきたい一曲です。
この記事で紹介したうたを、レッスンでうたってみませんか?
声楽個人レッスン・ボイトレを行っています♪
今回ご紹介した「ユレル」を、一緒に歌ってみませんか?
オンラインレッスンなので、自宅から参加OK! そして安心安全◎
個人レッスンが初めての方・初心者さんも大歓迎です(*^^)