ソプラノ／アウトリーチ専門演奏家の永井友梨佳です♩
ネオクラシカルな日本のうたの曲紹介シリーズ。
今回は、なかにしあかね作曲・星野富弘作詞の「秋のあじさい」です。
歌曲集「二番目に言いたいこと」の２曲目となります。
作曲のなかにしあかねさんって？
このブログでも多く取り上げている、大好きな作曲家さんです。
詳しくはこちらをぜひ↓
作詞の星野富弘さんって？
詩人であり、画家でもある星野富弘さん。
一度読んだら忘れられないような詩や絵ばかりです。
詳しくはこちら↓
先日、星野さんの個人美術館「富弘美術館」にも行ってきました！！
「秋のあじさい」の歌詞
では、歌詞をみてみましょう。本当に素敵な詩です。
秋のあじさい
一日は 白い紙
消えないインクで
文字を書く
あせない絵の具で
色をぬる
太く、細く
時にはふるえながら
一日に一枚
神さまがめくる
白い紙に
今日という日を綴る
詩・星野富弘
この詩は、初めて曲を聴いたときから頭から離れなくて
元気がない時や落ち込んだ時に思い出しては、何度も勇気をもらいました。
「時にはふるえながら」も、今日という日を綴っていこうと、自然と前を向けるようになる。
なんというか、決して押しつけがましくない、星野さんの優しさや強さが
溢れている詩だなあと思います。
「秋のあじさい」の星野さんによる原画
この詩の原画をご紹介しますね。
（星野富弘詩画絵はがき No.1208 今日 より引用）
この原画、先日「富弘美術館」に行ったときに、偶然にも実物をみることができたんです！
上の絵はがきの画像だと、１枚の紙に描かれているようにみえますが、
実際は、絵と詩が別の紙に描かれています。
その詩が、とても印象に残っていて。
薄くて繊細な紙に、ことばが、真っ黒ではなくて少し薄い色で描かれているんですよね。
この詩の内容にもリンクしているような気がして…
一日は白い紙。濃い色で力強く綴れる日もあれば、そうじゃない日もある。
でもそれもいいよね、それでも美しいよね、と気づかされました。
シンプルなようにみえて、とても深い曲
この素晴らしい詩に、なかにしあかねさんはとてもシンプルなメロディーを付けられています。
シンプルだけど洗練されていて、初めて聴いた人にも言葉がしっかり伝わる曲です。
歌う側にとっては、シンプルながらも、なかなかヘヴィーな曲だと思います。
しっかりと意思と表現をもって歌わなければ、伝わらないことがたくさんある奥深い曲です。
曲の後半には、さりげなくですが、割と複雑に「調性のゆらぎ」があります。
「太く、細く 時にはふるえながら」
そうやって繰り返される毎日が、調整のゆらぎによって表現されているように感じます。
調性がゆらぐのって、とても美しいですよね。
自分の人生のゆらぎも、そうやって楽しめたらなあと思ってみたり、、
とても味わい深い、表現の幅の大きい曲だなあと思います。
ソプラノ 西由起子さんによる解説
この歌曲集をなかにしあかねさんに作曲依頼された、
ソプラノ歌手の西由起子さんによる解説を、今回も少し引用させて頂こうと思います。
西由起子・著 星野富弘の詩による歌曲の世界 : なかにしあかね「二番目に言いたいこと」を中心にその魅力を探る（フェリス女学院大学学術機関リポジトリ）より引用
毎度ながらとても勉強になる解説です…
「それぞれ強弱だけではない表現が必要になる」という所が深いですね。
この曲は、強弱による派手な表現ではなくて、もっともっと繊細な、心の奥からの表現が必要だと思います。
西さんのおっしゃるように、歌のパートは休符も多いので、音楽が途切れないように意識もしなければなりません。
短くてシンプルだけど、ヘヴィーな曲だと感じるのはこのあたりですね…
その分、聴いている人にも多くのものを感じてもらえる１曲だと思います。
おわりに
歌曲集「二番目に言いたいこと」の中でも、個人的に特にお気に入りの曲です。
合唱版もとても美しいですよね。
大切な人に聴いてもらいたい一曲。
これからも、もっと伝わる表現ができるように磨いていきたいと思います。
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