ソプラノ/アウトリーチ専門演奏家の永井友梨佳です♩
ネオクラシカルな日本のうたのご紹介シリーズ。
本日は、なかにしあかね作曲・星野富弘作詞の「いつだったか」をご紹介します!
歌曲集「二番目に言いたいこと」の1曲目となります。
作曲のなかにしあかねさんって?
現在も活躍されている大好きな作曲家さん。
詳しくはぜひこちらをご覧ください↓
なかにしさんの「うた」に対する想いなどもまとめています。
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作詞の星野富弘さんって?
詩人・画家の星野富弘さん。心に刺さる言葉たちが本当にすばらしいです。
詳しくはぜひこちらをご覧ください↓
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「いつだったか」の歌詞
では、歌詞をみてみましょう。
いつだったか きみたちが
空をとんでゆくのを見たよ
風に吹かれて ただひとつのものを持って
旅する姿が うれしくてならなかったよ
人間だって どうしても
必要なものは
ただ ひとつ
私も
余分なものを
捨てれば
空が飛べるような
気がしたよ
星野富弘・詩
読み終えると、心が少し軽くなるような
ふっと余計な力が抜けるような、素敵な詩ですよね。
「きみたち」って誰?
さて、この歌詞を読んで疑問に思ったのは、
「きみたち」って誰なんでしょう?
私は、最初のうちは、飛んでいるから「鳥」なのかな?と考えていましたが
何度も曲を味わっていくうちに、曲調に風を感じるような気がしてきて
もしかして「たんぽぽのわたげ」かな、となんとなく思っていました。
そして、その答えは…
星野さんの原画をみるとわかりました!
(「新編 四季抄 風の旅」星野富弘・著 P.86 より引用)
なんと、私の想像が的中…!
たんぽぽをみて書かれた詩だったんですね。
そう思うと、春風に乗ってふわふわ舞うたくさんのわたげが浮かんできます。
風に身を任せるしかない、身軽に飛んでいくわたげたちに、憧れるきもち。
私も、余分なものにまみれてるな、捨ててしまって身軽になりたい、、
曲だけを聴くと、「きみたち」が「たんぽぽ」だという情報はひとつも入っていません。
なので、聴く人によって想像がふくらんで
いろんな解釈が生まれるのも楽しいですよね。
みなさんは「きみたち」が何だと思いましたか?
歌曲集のはじまりにふさわしい一曲
この詩に、なかにしあかねさんの曲がつくと、さらに深みを増していきます。
この曲は、ピアノによる割と長めの前奏から始まるのですが、
このピアノがとても素敵なんです…
めちゃくちゃ可憐でやさしいフレーズから始まって、
途中からは、春風がやさしく吹き抜けていくような感じ。
曲を聴くと、「たんぽぽ」であることがとてもよくわかります。
さわやかで、やさしい世界。
歌曲集のはじまりにぴったりの曲だと思います。
でも、やさしいだけじゃなくて
「人間だってどうしても 必要なものは ただひとつ」
の部分はすこし曲調が変わるんですよね。
星野さんの詩特有の、現実を突きつけられる感じが、とてもよく表現されていると思います。
そのあとの曲調が、しっかり希望に向かっていくのもステキ。
ソプラノ歌手 西由起子さんによる解説
さて、今回この記事を書くにあたって色々調べていたら、とても面白い文献をみつけました…!
この歌曲集は、ソプラノ歌手の西由起子さんが、なかにしあかねさんに作曲依頼したものなのですが
その西由起子さんによる曲の解説を発見…!
少しだけ引用してみますね↓
31小節「風に吹かれて」の「れ」は楽譜ではfisとなっているが、関東育ちの私にはイントネーションに違和感があったため、関西出身である作曲者の許可を得、初演から現在に至るまで、CD「二番目に言いたいこと」の録音も含めcisで歌っている。CD「今日もひとつ」収録の女声合唱版では楽譜通りfisで歌われている。《譜例①》
西由起子・著 星野富弘の詩による歌曲の世界 : なかにしあかね「二番目に言いたいこと」を中心にその魅力を探る(フェリス女学院大学学術機関リポジトリ)より引用
えー!そうだったんだ!!!
西さんは、「吹かれて」の「れ」の音を下げて歌っておられるんですね。
たしかに、楽譜どおりだと関西弁のイントネーションにも聞こえますね…
そして私個人的には、西さんと同じくcisの方が歌いやすそう。
なかにしさんの許可も得ておられるようだし、西さんと同じ解釈で歌ってみてもいいものかしら…
「人間だってどうしても必要なものはただひとつ」の部分は短調の和音を生かし、思いを込めて歌いたい。53~55小節、Hum.が指示されている部分は「ただひとつ」のモチーフであるが、私は作曲者の承諾を得て「ただひとつ」と歌詞で歌っている。
西由起子・著 星野富弘の詩による歌曲の世界 : なかにしあかね「二番目に言いたいこと」を中心にその魅力を探る(フェリス女学院大学学術機関リポジトリ)より引用
ここも、おどろきでした…!
なかにしさんの作品は、ハミングやヴォカリーズの指定が割とあって
どんな表現をするか、見せ所でもあるし、悩みどころでもあるんです。
この解釈を知っていると、自分が楽譜通りHum.で歌うとしても、表現の幅が広がりそう。
しかもなかにしさんの承諾済みの解釈ですもんね。強い…!
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この解説は、こちらのリンク先にある、PDFから引用させて頂きました。
作曲依頼をされた西さんによるものなので、全編読み応え抜群です。
ご興味のある方はぜひ読んでみてください…!
おわりに
この曲をとある病院でうたったときに、
観客アンケートで
「余分なものを捨てれば 空が飛べるような気がした、という言葉が印象に残っています」
という感想をいただいたことがあります。
初めて聴いても、これだけことばが印象に残る曲って本当にすごいですよね。
詩のちからと、曲のちから。
私の「うたのちから」も少しでもプラスできるよう、もっともっと精進していきたいです…!
出会えて本当に良かった曲のひとつです。
これからも大切に歌っていきます(*^^*)
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